日常生活の指導  日常生活の指導は,児童生徒の生活が充実し,高まるように日常生活の諸活動を適切に援助する。
 日常生活の指導は領域・教科を合わせた指導であるから,この指導では,生活科の内容だけでなく,いろいろな領域や教科に関わる広範囲の内容が扱われる。例えば,衣服の着脱,洗面,手洗い,排泄,食事,清潔など基本的生活習慣の内容や挨拶,言葉づかい,礼儀作法,時間を守ること,きまりを守ることなど,集団生活をする上で必要な内容等,多様な内容が取り上げられる。
 学校生活で,児童生徒が,毎日ほぼ同じように繰り返す日常生活の活動には,例えば,登校,用便,朝の支度(衣服の着脱,持ち物の整理など),係りの仕事,朝の会,給食,掃除,終わりの会,帰りの支度,下校等の諸活動がある。
 日常生活の指導の本質的な性格の一つは,生活の流れにそって,実際的な状況下で指導を行うところにある。例えば,手を洗う必要がある時の手洗いの指導であり,衣服を着替える必要があるときの着脱衣の指導であるということができる。日常生活の指導は,毎日反復して行い,その指導を通して,望ましい生活習慣の形成を図る。その指導は,発展的に繰り返すことが必要であり,固定的な繰り返しによって,児童生徒の活動を不自然に常動化させることは避けなければならない。
 各学級の児童生徒を対象とした日常生活の指導の全体計画は,比較的簡単なものでもすむが,登校・下校,身辺処理及び給食等の指導計画については,個別的なものが必要になる。
 日常生活の指導の内容となる諸活動の中には「特別活動」の内容と関係の深いものが多い。例えば,学級活動や学校給食に関する活動がそれである。このような活動については,
小学校及び中学校では,「特別活動」という領域の中の一部の内容についての指導と意味付けているのに対し,精神薄弱養護学校では,領域・教科を合わせた指導と意味づけていることが多い。日常生活の諸活動は,精神発達の未分化な児童生徒にとっては,各教科,道徳,特別活動及び養護・訓練に関する広範囲の内容を含む総合的な活動としての意味を持つからである。 



特殊教育諸学校 小・中学部学習指導要領解説 養護学校(精神薄弱教育)編 平成3年度文部省


※参考文献との都合上,「精神薄弱」という用語を用いてはいるが,平成11年4月1日より,「精神薄弱」は「知的障害」におきかえられている。



                             


日常生活の指導の考え方


日常生活の指導の意義

(1) 指導の必要性

 日常生活の指導とは,児童生徒の日常生活を充実させ,高めることを意図して,学校における日常生活の諸活動を適切に援助していく指導のことである。
 学校において,児童生徒が毎日一定時間に,ほぼ同じように繰り返す日常生活の諸活動としては,登校,朝の支度,係りの仕事,朝の会,給食,自由遊び,掃除,終わりの会,帰りの支度,下校などがある。このような諸活動の設定の仕方や名称は,それぞれの学校で様々であるが,児童生徒が朝,登校してから下校するまでの諸活動を生活の流れに沿って教育的に援助することが日常生活の指導である。
 発達の個人差はあるが,一般的には,小学校に就学する頃までには,日常生活に必要なことは家庭生活の中で学習されていて,衣服の着脱,洗面・手洗い,排泄,食事,清潔などの基本的生活習慣や,集団生活をする上で必要な挨拶,言葉遣い,礼儀作法,時間やきまりを守ることなどの基礎的能力も身に付け,自立しているのが普通である。しかし,発達に遅れを持つ子どもの場合には,就学段階になってもそれらの能力が未形成で未確立な場合が多く,しかも家庭における指導だけでは十分に身に付かない場合が多いので,学校で日常生活の指導として特別に取り上げて指導することが必要である。
 精神薄弱児の教育においては,日常生活の指導として特別に指導することが必要なのである。
 精神薄弱児の教育においては,日常生活の指導は,いわばすべての教育指導の基礎として極めて重要な位置を占めるものである。それは,日常生活の指導では,基本的生活習慣や集団生活をする上で必要な能力を高めることと併せて,児童生徒が日常生活をより自立的に,より発展的に対処するための生活意欲や生活態度を育てることも意図されているからである。したがって,日常生活の指導においては,単に衣服の着脱や排泄,食事などの技能の習得により自立化ではなく,児童生徒と教師が日常生活の指導における取り組みを通しての心通じ合う中で,児童生徒が日常生活により自立的に,より発展的に取り組むようになることが指導の基本である。

(2) 指導形態

 日常生活の指導は,「生活による生活のための指導」の典型であり,領域・教科を合わせた指導の形態の一つであるが,その指導形態の中でももっとも基礎的な内容を取り扱うものであり,まさに精神薄弱教育そのものの課題であるといえる。
 近年,養護学校や特殊学級における児童生徒の障害の重度化が著しいが,それに伴い日常生活の指導の重要性は一層増大してきている。
 日常生活の指導は,上述のように領域・教科を合わせた指導の形態の一つであり,その内容は生活科の内容が中心になってはいるが,各教科,道徳,特別活動,養護・訓練などの内容が総合的な形で含まれることになる。
 日常生活の指導の対象となる諸活動の中には,「特別活動」の内容と関係の深いものが多い。例えば,小学校・中学校の各学習指導要領では,学級会活動や学校給食などは,領域「特別活動」の一部の内容と位置付けられているが,精神薄弱教育では,領域・教科を合わせた指導の内容として位置付けられ,領域や教科の内容を合わせた総合的な形で指導される。
 これは,日常生活の指導の内容が広範囲の内容を含む活動から成り立っているからである。前述のように,日常生活の指導では,各教科,道徳,特別活動,養護・訓練等の内容を総合的な形で指導することになる。つまり,児童生徒の日常生活を教育的に援助することが,結果的に各教科等の内容に指導することになるのである。

(3) 指導の特徴

 日常生活の指導の究極的な目標は,児童生徒が1日の生活に見通しを持って,日常生活の様々な活動を自分自身の力で処理することができるようにすることである。単に身辺生活の処理に関する技能を高めることにとどまらず,日常生活をより自立的・発展的に対処するための生活意欲や生活態度を育てることも意図している。
 一般的には,日常生活の指導は,発達段階の低い児童の場合に大きく位置付けられ,発達段階が高くなるに付け位置付けは小さくなるが,それなりに大切にされなければならない。

 日常生活の指導には,次のような本質的特徴がある。

1.日常生活の指導は,生活の流れに沿って,実際的・具体的な場面と機会を捉えて行われる指導である。例えば,手を洗う必要があるときの手洗いの指導であり,衣服の着替えをする必要のあるときの着替え指導であり,食事をする必要のある時の食事指導である。それ故,現実度が高く,指導の必然性が明確で,児童生徒の動機付けはしやすい。

2.日常生活の指導は,学校における生活の全範囲にわたる指導である。時間的には,児童生徒の登校から下校までの長時間に及び,指導の場は学校の中にとどまらず,校外にまで及ぶこともあり,極めて広範囲である。

3.日常生活の指導は,一過的に終わる指導ではなく,毎日の指導の流れの中で同じように繰り返し,反復して指導することが必要である。

4.日常生活の指導は,集団における指導と併せて,一人ひとりの児童生徒の日常生活の実態に基づいて,個人指導の徹底を図ることが肝要である。

 毎日の生活の流れの中で,同じように繰り返し指導することが日常生活の指導の本質的特徴であるが,このことは指導におけるマンネリ化に結びつき,児童生徒の学習意欲の減退につながりやすい弊害を有している。したがって,日常生活の指導においては,指導のマンネリ化に陥らないよう指導の工夫や配慮が必要である。

(4) 指導時間

 日常生活の指導時間は,週時程表の中では,多くの場合帯状に設定され,「登校」「朝の支度」「係りの仕事」「朝の会」「給食」「自由遊び」「掃除」「終わりの会」などと具体的な活動名で表示されることが一般的である。このことは,児童生徒が学校生活の流れを理解しやすく,学校生活のリズムを身に付ける上からも効果的なことである。
 日常生活の指導として取り扱われる児童生徒の活動は,毎日,一定時間にほぼ同じように繰り返される活動であり,児童生徒にとっては,生活上必要不可欠な活動である。したがって,その活動の仕方をパターン化することは指導上大切なことであるが,反面,毎日同じような活動が固定的に繰り返されると,児童生徒の活動の仕方が常同化し,発展性のないものとなる。それ故,指導に当たっては,固定化しつつある活動パターンを,発展的な繰り返しによって,より水準の高い活動パターンに変えていくように,適切な手だてを講じる必要がある。



 

児童生徒の実態に応じた指導


(1) 指導計画の作成

 児童生徒の日常生活への取り組みは,能力や障害の状態,性格や家庭の生活状態の違いなどによって,一人ひとり異なっている。したがって,日常生活の指導を効果的なものとするには,指導に当たって一人ひとりの児童生徒の日常生活についての実態を的確に把握し,それに基づいて指導計画を作成することが必要である。
 日常生活の指導の指導計画は,朝の会,食事(給食),掃除などの場や機会別に作成するが,学級全体の計画に加えて,個人別の指導計画を作成する必要がある。特に,衣服の着脱,排泄,食事などの基本的生活習慣に関する指導計画は,個人別の指導計画が必要である。
 そして,一人ひとりの児童生徒の実態の応じた適切な日常生活の指導をするためには,次のような実態把握−計画の作成−指導の実施−指導の評価のサイクル化を実施し,きめ細かい指導をすることが必要である。

1.児童生徒の日常生活に関する実態を的確に把握する。
 日常生活の諸能力について,単に「できる・できない」の評価ではなく,どのような状況で,どのような援助により,どんな行動が見られるか,具体的な取り組みの状況を明らかにすることが大切である。

2.実態の把握に基づき,個人別の指導計画を作成する。
 指導計画は,個々の児童生徒の行動特徴に応じて,指導手順,援助の仕方,必要とする環境上の調整,再評価の仕方などについて,具体的にきめ細かく計画を立てる必要がある。

3.指導の実施
 指導では,児童生徒一人ひとりに最も適切な方法で,環境条件を整えて指導に当たることが肝要である。そして,児童生徒が日常生活の諸活動に精一杯取り組み,それを首尾よく遂行できるよう,個々に応じた教育的援助をすることが大切である。日常生活の指導を通して,児童生徒に成就感,達成感を体験させ,意欲を持って取り組むようにさせることが自立につながるのである。

4.指導の評価と指導計画の見直し・修正
 指導の過程で,一人ひとりの児童生徒の進歩の状況等を評価し,その結果に基づいて計画を見直し,必要な修正を行わなければならない。


(2) 指導の一貫性

 日常生活の指導では,児童生徒の日常生活への取り組み方が,次第に自立的になり,発展するように,その指導が段階的に進められ,その指導の進め方に一貫性がなければならない。特に,児童生徒の障害が重いほど,一貫した指導を,長時間,忍耐強く継続することが必要となる。
 日常生活の指導においては,児童生徒が,より自立的・発展的に活動できるように,衣服,持ち物,道具,用具などを個々の児童生徒に合わせて用意することや,日常生活に関わる児童生徒の活動に対して,励ましや賞賛などの言葉かけを,個々の児童生徒に合わせて行うことが,教育的援助として大切である。




家庭との協力指導


(1) 学校生活と家庭生活の一貫性

  学校生活の指導に当たっては,学校と家庭(寄宿舎・施設)が十分に協力していかなければ,真にその効果を上げることは難しい。いわば,学校と家庭との協力関係の良否によって,日常生活の指導の成果が大きく左右されるといっても過言ではない。
 特に,望ましい生活習慣の形成を図るためには,学校生活と家庭生活における一貫性が必要である。学校と家庭とが,児童生徒の望ましい生活習慣の形成を図るため,児童生徒の生活習慣の実態や指導の方法などについて共通認識を持ち,一貫した対応を行うことが大切である。
 日常生活の指導は,学校と家庭の共通理解の上に立って,学校という集団の場,家庭という個人の場,それぞれの状況の中で,一貫性のある指導をすることが必要である。


(2) 親に対する指導

 学校と家庭とが協力した指導を進めていく上で最も基本的なことは,児童生徒を中心としながら,相互に信頼し合う関係が成立していることが前提となることである。この前提に立って,家庭に対し必要な指導助言がなされなければ,指導効果を上げることは困難である。
 発達に遅れのある児童生徒の指導に関しては,親自身も困惑することが少なくないので,
教師は親の心情を受容し,親自身の心の不安を取り除くような働きかけをした上で,日常生活の指導に共同して取り組む協力者として,親に対する指導をすることが必要である。



生きていく力を拡大する


(1) 日常生活の発達段階

 日常生活の指導は,基本的生活習慣の形成や集団生活への参加に必要な能力の向上を図ることにより,現在の学校生活や家庭生活をより自立的,より発展的なものにするとともに,将来の社会生活へのよりよい参加や適応を目指している。
 日常生活の内容は,発達段階により大別すると,次のの三つの内容に分けられる。
 その第一は,個人の身辺生活の自立に必要とされる基本的な生活習慣に関する内容で,食事,排泄,衣服の着脱,清潔,健康・安全などが含まれる。
 第二は,集団生活への参加に必要とされる基礎的内容で,あいさつ,遊び,規則を守る,応対,手伝いなどが含まれる。
 第三は,実際(社会)生活に必要な知識,技能,態度に関する内容で,家事,仕事,公共物(施設)の利用,交通機関の利用などが含まれる。


(2) 仕事内容の発展・拡大

 日常生活の指導では,児童生徒の発達段階に対応して,第一の自己の身辺生活の自立に必要とされる基本的生活習慣を中心とする指導から,次第に第二の集団生活への参加に必要な基礎的内容へと進み,さらに第三の実際生活・社会生活に必要な内容へと発展し拡大していくことになる。
 このように日常生活の指導は,個人の基本的生活習慣の形成・確立から,集団生活への参加のための基礎的能力の習得,さらには実際生活・社会生活に必要な内容へと,指導内容が発展・拡大していくところに指導の特徴がある。
 そして,基本的生活習慣の形成・確立は,社会的自立の基盤をなすものであるといえる。
 基本的生活習慣の形成・確立により,児童生徒は生活に意欲的,積極的に取り組むようになる。そして,児童生徒が日常生活において自己実現を図りつつ,意欲を持って,生きていく力を拡大していくことこそ日常生活の指導の終極的なねらいといえる。    



クロワール精神薄弱教育実践講座 第4巻日常生活の指導





教育課程における日常生活の指導の位置付け 日常生活の指導と生活単元学習等との関連


(1) 日常生活の指導と遊びの指導

 朝,登校し,排泄,着替え等を済ませた後,朝の会までの間,プレイルームや中庭で自由に遊ぶ時間を設定することがある。また,昼食・歯磨き等を済ませた後や,掃除・帰りの支度などを済ませた後に,自由に遊ぶ時間を設けることもある。自由に遊ぶ時間であっても,児童生徒は教師の指導下にある。意図性,計画性は弱いけれども,遊びを指導していることになる。この種の指導を指導の形態としての「遊びの指導」と意味づけられないこともない。その場合の児童生徒の活動は,毎日,一定時間に,ほぼ同じように,生活の流れの中で繰り返されるものなので,その指導を「日常生活の指導」と意味づける方が適当であろう。
 朝の会の中で,やきいもごろごろ,花いちもんめ,電車ごっこなどの遊びが取り入れられることがある。それらの遊技活動の指導については,日常生活の指導の時間「朝の会」で行われることなので,指導の形態としての遊びの指導の時間と位置付けることはできないのである。しかし,それの遊戯活動の指導は,指導の形態としての遊びの指導と本質的に異なるわけではない。(一つの学習活動の中に二つ以上の指導の形態を位置付けることはしないのが基本である。)


(2) 日常生活の指導と生活単元学習

 日常生活の指導と生活単元学習を関連づけて進めることが少なくない。例えば,学級でうさぎをもらったことを朝の会で話題にし,単元「うさぎをかおう」に取り組み始める。うさぎの家や遊び場をつくる活動を終えた後,係りの仕事として,うさぎの飼育を継続する。また,単元「トマトときゅうりを作ろう」に取り組み,畑を耕したり,苗を購入し,植えつけたりする等の活動をする。その後,係りの活動として,水やり等の世話を継続する。単元「合宿」の期間中,合宿当日の着替えを想定して,毎日の着替えをする。さらに,合宿当日の部屋別グループごとに食事をしたりする。また,単元「くし焼きづくり」,「ハンバーグづくり」などで作ったものを給食時に食べたりする。単元「家を作って遊ぼう」で自分たちで作った家の中で,食事をすることもある。これらの単元の内容には,通常,日常生活の指導で行われる着替え,食事が含まれている。
 生活単元学習の遊戯活動や劇活動と関連づけて,朝の会で行う遊戯活動を計画することがある。また,朝の会で,その日の生活単元学習への取り組みに対する動機づけや準備を行い,帰りの会でその日の生活単元学習への取り組みを反省し,その結果を日記に書いたりする。 
 日常生活の指導と生活単元学習の指導との関連付けを強めると,生活単元学習の内容の一部を日常生活の指導で取り扱うことになる。また,日常生活の指導の一部を生活単元学習の内容として指導することにもなる。


(3) 日常生活の指導と作業学習

 作業学習を学校生活の中心に位置づけている場合,日常生活の指導を作業学習に関連付けて進めることが多い。特に,作業班と学級集団が同じ場合には,その関連付けが強まる。
 登校し,作業服に着替え,ジョギングをして,朝の打ち合わせを行う。打ち合わせの中心的内容が,その日の作業に関することになる。注文状況が報告されたり,納品に対する礼状が紹介されたりする。作業終了後,作業室の掃除をし,手を洗う。終わりの会で,その日の作業経過や作業結果を日記に書く。そして,通学服に着替え,下校する。
 このように,作業学習の指導内容の一部を日常生活の指導に組み入れているともいえるし,作業学習の指導内容の一部を日常生活の指導と合わせているともいえる。
 職場実習(現場実習)や就職を目指して,日常生活の指導を進めることがある。登校・下校時,タイム・カードの使用に慣れたり,身だしなみに注意を向けたり,昼食に時間がかかりすぎないようにしたりするなどの指導を行うなどがその例である。


(4) 日常生活の指導と教科別の指導   

 日常生活の指導は,領域・教科を合わせた指導の一つの形態である。したがって,その指導内容は,生活科をはじめ,いろいろな教科の内容が含まれている。それらの教科の内容については,教科別の指導でも扱い得るので,教科別の指導を行っている場合には,指導する内容が,日常生活の指導と関連するのである。
 朝の会,終わりの会で歌う歌は音楽の時間と関連し,朝の会で「昨日のこと」を話し合い,終わりの会で日記を書けば,国語の時間の指導と関連する。また,朝の会で「今日は,何月何日,何曜日」の指導をすれば,算数の指導の時間と関連し,朝の会のリトミックや着替えの後のランニングは,体育・保健体育の時間の指導と関連する。
 生活科の内容の多くは,それだけを取り出して時間を設定して指導するよりも,領域・教科を合わせた指導の形態により,総合的に取り扱うことの方が効果的である。したがって,生活科の時間については,設定しないことが一般的である。


(5) 日常生活の指導と領域別の指導

 日常生活の指導は,既述のように,領域・教科を併せた指導の一つの形態であるので,その指導内容には,道徳,特別活動及び養護・訓練の各領域の内容が含まれる。
 道徳については,領域・教科を合わせた指導の中に,その内容を含めて取り扱っていることが一般的であるが,時間を設定した場合には,その時間の指導と日常生活の指導との関連は大きくなる。それは,日常生活の指導の指導内容には,生活科の内容が大きく含まれており,生活科の内容と道徳の内容には重複する部分が大きいからである。特別活動の内容の多くは,日常生活の指導,生活単元学習などの中心的内容になる。したがって,特別活動の時間を設定して指導するのは,クラブ活動,生徒会活動等一部の内容に限られる。 日常生活の指導として進める朝の会・終わりの会の指導の内容は,特別活動の学級会,児童会活動・生徒会活動等が主になる。したがって,朝の会,終わりの会を特別活動の時間として位置付けられないこともない。また,日常生活の指導として進める食事の指導の内容は,主に特別活動の学級会活動の中の学校給食の指導である。したがって,特別活動の給食の時間として位置付けることもできる。(なお,小学校において,学級会活動にあてる年間授業時数は,年間35週以上にわたって計画することとなっているが,そのうち学校給食にかかるものは,除かれる。)
 しかし,精神発達の未分化な児童生徒を対象とした場合には,朝の会・終わりの会,食事などの指導を,一つの領域である特別活動に位置づけるよりも,領域・教科を合わせた指導である,日常生活の指導として総合的に指導を行う方が望ましいのである。
 養護・訓練の内容の多くは,日常生活の指導,遊びの指導,生活単元学習,作業学習など領域・教科を合わせた指導で効果的に取り扱われることが多い。したがって,養護・訓練の時間を設定して指導を行うのは,発達上の顕著な偏りに関する内容で,しかも治療的・訓練的な効果がかなり期待できる内容に限られる。
 養護・訓練の時間を設定して指導を行うとしても,その指導内容ついては,日常生活の指導においても,常に,適切な配慮がなされなければならない。身体の健康,心理的適応,環境の認知,運動・動作,意思の伝達という養護・訓練のいずれの内容に関しても,日常生活の指導において,適切な指導上の配慮が必要となる。

 日常生活の指導は,領域・教科を合わせた指導の諸形態の中でも,最も基礎的なものであり,したがって,日常生活の指導における児童生徒の活動には,いろいろな領域や教科の内容が総合的に含まれている。遊びの指導,生活単元学習,作業学習など,領域・教科を合わせた指導との関連が密接であるばかりでなく,教科別の指導,領域別の指導とも関連が深い。したがって,日常生活の指導の指導計画を作成するに当たっては,他の指導形態による指導と有効な関連付けが図られるように十分な配慮をすることが大切である。




日常生活の場・機会別の指導計画


日常生活の指導の場・機会とは,登校,朝の支度,朝の会,係りの仕事,食事,掃除,帰りの支度,終わりの会,下校などの活動が行われる場であり,機会である。それらの活動は,毎日,ほぼ一定時間に,同じように繰り返されるものであり,週時程表(日課表)では,帯状に設定された時間帯で行われることが多い。
 生活単元学習の過程に劇の練習があって,その際,衣服の着替えを指導しても,日常生活の指導とはいえないのである。その着替えをする場と機会は,日常生活の指導の場と機会とは見なし難いからである。また,体育の授業中に用便の訴えがあり,排泄の指導をしても,同じ理由で日常生活の指導の場・機会とはいえないのである。
 上記の場合には,着替えの指導の場・機会であり,排泄の指導の場・機会であっても,日常生活の指導の場,機会とはいえないのである。
 日常生活の指導の全体計画を立てるに当たっては,日常生活の指導の場・機会を週時程(日課表)の上で,どのように設定するかを決めなければならない。週時程表の中に設定した日常生活の指導の個々の時間帯の呼称については,児童生徒にふさわしいものにする必要がある。それぞれの時間帯における指導計画が,日常生活の指導の場・機会別の指導計画である。日常生活の指導計画としては,指導の場・機会別の指導計画に加えて,次節で述べる個人別の指導計画が大切なものである。


(1) 登校・下校

 登校・下校あるいは,通学の方法は,学校,部,学年等により様々である。家庭,寄宿舎,児童福祉施設などのいずれから通学するかによって,その方法は変わる。スクールバスの利用の有無・利用の仕方によっても,その方法は異なる。児童生徒の通学方法が多様であることを十分考慮して,登校・下校の指導計画を立てなければならない。
 登校・下校の指導については,教師が直接当たる部分と,家庭,寄宿舎,児童福祉施設などの関係者の協力を得て進められる部分とがある。したがって,指導計画を立てるに当たっては,教師が直接指導する内容とともに,家庭などに依頼する指導の内容を明らかにする必要がある。その上で,指導体制,手順,手だてなどを計画することになる。
 登校・下校に対する指導内容としては,「おはようござます,さようならのあいさつをする」,「靴の履き替えをする」,「かばん等の始末,整理をする」,「目的地まで歩く」,「道路を安全に歩く」,「信号にしたがって歩く」,「バス,電車などを利用する」などがある。 教師,保護者などに付き添われた通学から,一人で通学するまでの指導の過程には,多くの段階がある。その段階的な指導については,個人別の指導計画で具体化しなければならない。


(2) 朝の支度・帰りの支度

 着替えに関する指導内容としては,「衣服の着脱をする」,「衣服の始末をする」などの内容がある。衣服の着脱,始末等については,どのように援助するかは,個人別の指導計画において具体化することになる。その際,着脱しやすい衣服の工夫,寒暖に合わせた衣服の洗濯・調節,汚れやほころびのある衣服の着替えなどに関する指導については,家庭等の協力を得なければならない。家庭等の協力が得られることにより,指導の成果を期待することができるといえる。
 中学部・中学校段階及び高等部段階の生徒に対する着替えの指導においては,生徒が青年期であることを考慮した対応が必要である。
 排泄の指導については,小学部・小学校段階では,一定時間を決めて行うことが多い,排泄に関する自立の程度は,個々の児童生徒によって様々であるので,具体的な指導の内容・方法については,個人別に計画をすることになる。排泄に関する指導内容としては,「尿意,便意を告げる」,「ズボンやパンツを下げたり,脱いだりする」,「便所へ行き,用をたす」,「後始末をし,服装を整える」,「用便後,手を洗う」などがある。排泄の指導の一定時間については,着替えの前あるいは後,授業の間の休憩時間,給食の前及び後などに設定する場合が多い。


(3)朝の会・終わりの会

 朝の会については,全校単位,部単位,学年単位,学級単位など,大小様々な集団で計画され実施される。その呼称についても,おはよう広場,朝会,朝の集い,学級集会,ホーム・ルーム,全校集会などいろいろである。毎朝開かれるものもあれば,週1〜2回開かれるものもある。
 計画される具体的活動については,全校単位のもの,部単位のもの,学級単位のものなどによって大いに異なるが,あいさつ,ランニング,歌,体育,今日の予定,ゲームなどが取り入れらることが多い。 
 学級単位の会では,前記のものに加えて,出欠調べ,月日・天気調べ,昨日のことの話し合い,日記の朗読など,多様な活動が計画される。どのような活動を計画するにせよ,1日の始まりという意識を強め,1日の生活に取り組む動機づけを高める配慮が必要である。
 朝の会の指導では,同一集団に同じ活動を計画するという一斉指導の形態がとられやすい。そのため,計画された活動に取り組めない児童生徒がでてくることがある。集団を対象にしていても,常に指導の個別化を図ることに努めなければならない。
 終わりの会については,一般に,一学級単位で計画される。その呼称については,帰りの会,1日のまとめ,まとめの会,帰りのホームルームなど様々である。計画される活動には,児童生徒の年齢などによっても大変異なるが,1日の反省,日課表の記入,明日の予定,歌,あいさつなどが含まれる。
 中学部・中学校段階及び高等部段階で,作業班が学級集団になっているときには,その日の作業学習に関するまとめの内容が,終わりの会で大きく取り扱われることがある。


(4) 係の仕事

 一般に,係り活動といわれているものの中には,必ずしも一定時間に行われないものが含まれるが,日常生活の指導として進める係りの仕事については,帯状の時間帯で行われるものに限る方が理解しやすい。係りの仕事の呼称については,朝の仕事,帰りの仕事,係りの仕事,係り活動などがある。
 計画される具体的活動としては,窓の開閉,小動物の世話,草花の世話,ごみ箱のごみ捨て,出欠状況の報告,月日・曜日の黒板への記入など様々である。既存の係り活動に児童生徒を割り当てるというよりは,児童生徒に合わせて係りの仕事を設けるという対応,姿勢が大切である。
 個々の児童生徒が,係りの仕事をよりよく遂行するための手だて・手順等については,個人別の指導計画で具体化されることになる。


(5) 食事

 給食の時間における児童生徒の活動の流れは,おおよそ次のようになる。手洗い→エプロン等の着用→食器・食品の運搬→配膳→食事→食器の後片づけ→歯磨きなど
 準備・後片づけについては,児童生徒が役割を分担して行えるように適切な指導を行う必要がある。個々の児童生徒が,役割をよく遂行できるようにするためには,個人別の指導計画においては,必要な手順・手立て等を明確にすることが大切である。
 食事をすることに含まれる内容は広範囲にわたる。例えば,スプーン・フォークはし等を使って,こぼさないように食べる。スプーンやコップで上手に飲む,魚の細かい骨をより出すなど食事の技能に関するもの,好き嫌いをしないで食べるというような偏食に関するもの,行儀よく食べる,食後に口のまわりをふく,作法を守って食事をするなど食事のマナーに関するものなどがある。
 食事に関する指導計画を作成するに当たっては,食事に関する個々の児童生徒の問題点や課題を明確にし,指導の体制・方法等について計画する必要がある。個々の児童生徒に対する指導の手順・手立て等については,個人別に計画することになる。個々の児童生徒にいくつもの問題点・課題があるので,個人別の指導計画は,問題性・課題別に立案する必要がある。


(6) 自由遊び

 主として小学部低学年の児童に対して,思い思いに遊ぶ時間を設けているような場合,それを日常生活の指導の時間と位置づけることができる。児童が,好きな遊びに取り組めるように,遊びの場を設定し,遊具等を用意しておけば,児童は,自ら遊びを選び,遊び始めるものである。毎日,同じ時間に同じような状況下で遊びを繰り返し行えば,児童の遊びが一定化することが多い。ある児童は,毎日,ブランコに乗り,ある児童は,自転車に乗り続け,ある児童は,ボール遊びに熱中する。この場で,教師がしなければならないことは,安全を確保し,遊びを発展させるきっかけを作ることである。


(7)掃除

 そうじの指導を計画するに当たっては,まず,掃除の場所,役割分担,掃除の方法などを決めることになる。掃除にかかわる児童生徒の活動としては,机・いす等の移動,ごみ拾い,ほうきでは掃くこと,掃除機の使用,ぞうきんがけ(水ぶき・からぶき)などがある。みんなで同じ活動をする場合もあれば,分担して作業をする場合もある。
 掃き掃除,床みがきなどにおいては,それぞれの活動を行うことの意味を理解できるようにする工夫が大切である。ごみや汚れの見えにくい場所では,特に,その工夫が必要である。
 掃除の指導では,掃除の技能を高め,掃除をする態度・習慣を作ることはもちろん大切であるが,低学年の児童等の場合には,掃除にかかわる活動を,遊戯的・運動的な活動として意味づけることがあってもよいのである。 



日常生活の指導の手引き(改訂版) 平成6年文部省