子どもたちが激しい社会の変化に対応し,主体的に自己の進路を選択し決定できる能力やしっかりとした勤労観,職業観を身に付けること,また,生きていく上で直面するであろう様々な課題に柔軟にかつたくましく対応し,社会人・職業人として自立していくための支援の必要性等,今,学校における「キャリア教育」の重要性が指摘されて,小学校・中学校・高等学校のそれぞれの発達段階に応じた様々な取組が進められているところです。
 平成19年9月5日(水)に実施された第1回ステップアップセミナーでは,筑波大学特任教授キャリア支援室長 渡辺三枝子先生をお招きし,「学校におけるキャリア教育の推進」と題してご講演をいただきました。当日は,県下各地から五百数十名の参加者を得ました。 渡辺先生の温かな人柄,柔和な語り口の中にキャリア教育への熱い思いとともに,小・中学校においてキャリア教育に取り組む際の視点について事例を交えて分かりやすくお話していただきました。
 その講演内容の一部を紹介いたします。

1 教育改革の理念と方向性を示すキャリア教育

キャリア教育は,一人一人のキャリア発達や個としての自立を促す視点から,従来の教育の在り方を幅広く見直し,改革していくための理念と方向性を示すものである。

 学校現場の状況把握,児童生徒の実態を十分に捉えた上で何ができたかを検証することが大切である。

·                  学校でやっていることの意味付けをする。

·                  これまでの活動をキャリア教育の視点で見直す。

 推進にあたっては,PDCAのサイクルが重要となる。「学校としてどんな力を身に付けさせるのか」「どんな子どもに育てたいのか」を,子どもにかかわる教師や保護者,地域の期待としてしっかりと考え,推進していくことが大切である。

 児童生徒の実態や地域性等,キャリア教育に取り組む上での現状が異なる。したがって,各学校での取組内容はひとつとして同じものはない。異なるものという認識が必要である。

·                  キャリア教育においては個別性(個々人の経験)を重視……私と社会とのかかわり

2 子どもたちの「発達」を支援するキャリア教育

キャリア教育は,キャリアが子どもたちの発達段階やその発達課題の達成と深くかかわりながら段階を追って発達していくことを踏まえ,子どもたちの全人的な成長・発達を促す視点に立った取組を積極的に進めることである。

 「教師の観察」「子どもの感想」からどのような手だてを講じていくのか,より具体的なプログラムを描くようにする。
 『キャリア教育推進の手引き』(平成18年11月 文部科学省)の「第4章各学校段階におけるキャリア教育」を参照する。

 数字で表す評価よりも,そのプロセスにおいて教師がどのようにかかわったのかが大切である。即ち,目指す子ども像に近づけるための教師のアプローチが重要となる。

 「キャリア教育」を通して育てたい4つの能力(人間関係形成能力,情報活用能力,将来設計能力,意思決定能力)は,生涯にわたって培うべき,身に付けるべき能力であるが,あくまでも例示にすぎない。子どもが自立するために必要な力として4つの能力を提示したものである。

·                  子どもたちを支援していく視点ともなるものとして考えてほしい。

·                  日常の活動の中で,これらの力をはぐくむ活動をクローズアップすることが大切。

·                  これらの力を提示した背景に,ICTの技術革新により,以前は暮らしの中で自然に身に付けることができた力が失われている現状もある。身に付けられなくなった力がある。

·                  子どもの将来を見据えて,今,身に付けさせるべきは,どんな力であるのかを見極めて身に付けさせていくことが大切である。

·                  例えば,ある学校では,「自己表現力」をはぐくむことを掲げた。

·                  子どもの発達を促すために必要な力であり,ひいては生きる力を育てることにつながる。

 4つの能力を育てるために何かをするのではなく,日ごろの活動を充実させたら,これらの能力が伸びたという事実こそが大事である。

 小中高の連携強化が望まれる。特に,小学校と中学校,中学校と高等学校の連結部分に焦点を当てる。連携の強化には教師自身の意識改革が必要である。キャリア教育の視点からの子どもの育ちを受け継いでいく連携の在り方が問われている。

·                  子どもの育ちを教師間で共有化する。

·                  教師自身のコミュニケーション力を付ける。

·                  学校全体(組織体)として推進する。

3 教育課程の改善を促すキャリア教育

キャリア教育は,子どもたちのキャリア発達を支援する観点に立って,各領域の関連する諸活動を体系化し計画的,組織的に実施することができるよう,各学校が教育課程編成の在り方を見直していくことである

 「Work」子どもの仕事(働くこと)は,学ぶことである。

 子どもにとっては,「学校」という社会の中で生きること=学ぶこと=働くこと。

·                  自分と社会をつなぐ活動が,キャリア教育である。

·                  学校は,自立するための準備段階の場所である。

 学びへの挑戦,新しいことに挑戦する心を育てることが大切である。

·                  子どもが学ぶ過程で,「学ぶことの面白さや楽しさ」,「学ぶ喜び」といった学ぶことの価値を見出していけるように,教師が適切にかかわっていく。

·                  学ぶ存在としての『私』を自覚させる。そのことがひいては,学力向上へとつながる。しかし,現在は学力低下以上に学習に対する意欲の低下が深刻な状況にある。そのために,子どもが授業場面で手を挙げるという行為(意思決定能力)を評価することも大切である。発言の内容は,その次の段階で評価し支援する教師の構えで臨むことも必要になる。

 未経験のことを強制して体験させていくことも必要。

·                  積極的に挑戦できる力,姿勢が身に付けば自立へ近付ける。

·                  体験を通した気付きを大切にする。

·                  「キャリア」は体験の積み重ねである。

 生涯学習社会……知的な経験の積み重ねが要求されている。

·                  社会性,社会的な成熟,自立(自己責任)は,どのように時代が変わろうとも普遍的に要求されることである。

 明日(未来)を意識して今を生きることが大切である。

·                  過去,現在,未来をつなぐ。今を大事にする営み,夢の実現のために,今何をするかがキャリア教育である。

 好きなことばかりやらせない。興味のないことにも挑戦させるようなカリキュラムやプログラムを準備したり,困難な場面を意図的に設定することも大切になる

 学校における具体的なキャリア教育の推進の在り方について,渡辺先生が編集の主査をお務めになられた『キャリア教育推進の手引き〜児童生徒一人一人の勤労観,職業観を育てるために〜』(平成18年11月 文部科学省)が参考になります。ぜひ,御覧ください。また,教育ながさき(平成19年9月号)にキャリア教育の特集を掲載しておりますので,併せて御覧ください。

 


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