長崎県教育センターWeb情報 第229号 (平成19年1月19日)

   学校における人権教育を進めるために

教育経営課 義務教育班


1 人権教育に求められているもの   

  昨年1月,文部科学省より「人権教育の指導方法等の在り方について[第二次とりまとめ]」が発表されました。この中には学校における人権教育の充実や改善のための基本的な考え方,指導方法,研修の在り方などが述べられています。また,全国各地の学校で実践された事例が数多く紹介されています。本文については次のアドレスを参照ください。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/024/report/06012408/003.htm)

(1) 人権教育の目標
 第二次とりまとめでは,人権教育の目標は「一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ,人権の意義・内容や重要性について理解し,[自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること]ができるようになり,それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるとともに,人権が尊重される社会づくりに向けた行動につながるようにすること」と述べられています。(「第二次とりまとめ」p9)

(2)
人権教育の課題
 人権教育を通じて育てたい資質・能力については次のように述べられています。
「人権教育は自他の人権の実現と擁護のために必要な資質や能力を育成し,発展させることを目指す総合的な教育である。その際に必要とされる資質や能力は,@知識的側面,A価値的・態度的側面,B技能的側面という3つの側面からなっている。このうち価値的・態度的側面,技能的側面が深く人権感覚に関わるものである。したがって,知識的側面にとどまらず,価値的・態度的側面や技能的側面を含めた形で,資質や能力を全面的・調和的に発達させるように働きかけ,促進することが,人権教育の具体的な課題となる。」(「第二次とりまとめ」p7)
 これまで「人権教育」というと,「人権に関する知的理解」の側面ばかりに焦点が当てられてこなかったでしょうか。人権問題について正しい知識を持ち,理解を深めることは大切なことですが,身の回りで起こったことを「人が大切にされているのか?」という視点で感じとり,声を上げ,行動に移せるようになるためには,「人権感覚」を育てることが大切だと述べられています。(下の図は「第二次とりまとめ」p8)
 
 
2 人権感覚を高める基礎的な4つの力  

 人権感覚を高めるためには特に次の4つの力を伸ばすことが大切だといわれています。

@ セルフエスティーム(自尊感情,自己肯定感情)
 自分自身をかけがえのない価値ある存在として認める実感のこと。また,自分の立場と生き方に「誇り」を持てるようになることです。

A コミュニケーション能力
 お互いが自分の考えや気持ち,気分などを伝えあうことは人間関係を築く上で欠かすことができません。伝える方法は「話す・聞く」が一般的ですが「書く・読む」という方法もありますし,「目は口ほどにものをいい」と言うように相手の表情を読むということもあります。自分の考えや感情をはっきり表現できるというだけではコミュニケーション能力が高いとは言えません。相手の話を集中して注意深く聞くことや,その表情から感情を読みとることも大切なことです。

B アサーティブネス(非攻撃的自己主張)
 相手に対して尊重の気持ちを持ちながら素直に自分を表現する能力のことです。自己主張することが抑えられてきた日本においては,特に技能(スキル)が必要です。相手のことを大切にした上で,自分の気持ちや感情,また,自分のこだわりをしっかり表現する努力をすれば自分にとって何が大切で,何が課題なのかが明らかになってきます。
*アサーショントレーニングについては「長崎県教育センターWeb情報 第226号」に詳しく掲載されています。ご参照ください。

C 
協力できる力と仲間づくり
 共通の目標に向かって協力し合う活動の中で,仲間の立場に気づき,助け合いや思いやりの態度が育ちます。そして,自分がその集団の価値ある構成員であることを実感し,協調性を育み,相互依存という認識を持ち始めたとき,違いがあるから楽しい,豊かになれるという価値観が身に付いていきます。
 
3 自己肯定感情(セルフエスティーム)について考えてみましょう

 「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるようになる。」という人権教育の目標を分かりやすく図で表すと次のように示すことができます。

  
 「自分自身を肯定的にとらえ,かけがえのない一人の人間として大切にする」という自己肯定感情は人権を支える一本の重要な柱ですが,それだけでは人権を支えることはできません。自分を肯定的にとらえるとともに,自分の周囲の人のことも肯定的にとらえるもう一本の柱が必要です。周囲の人を大切にするという気持ちは,自分自身も周囲の人から大切にされているという,いわゆる,学級の一員であるという所属感や,誰からも認められているという充実感を味わわせることによって育まれていきます。そのためにも,まず,「自分のことが好き」という自尊感情を高めることが重要です。この二つの柱をしっかり育てていくことで,いじめや仲間はずしという学校で起こる問題への解決の道筋が見えてくるのではないでしょうか。
 
 
 

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