長崎県教育センターWeb情報 第226号 (平成18年12月20日)

   アサーションのすすめ

教育相談課相談班

  「自分の言いたいことを我慢して言えなかったり,その我慢ができなくて逆に暴言を吐いたりするなど,適切な自己表現ができずに友達とトラブルを起こし困っている子ども」がいて,何とか改善させてあげたいと思ったことはありませんか?
  そのような時には,コミュニケーション能力を高めるSST(ソーシャルスキルトレーニング)の一つであるアサーショントレーニングを活用し,子どもへの支援の一つとして活用してみてはいかがでしょうか。


コミュニケーション能力を高め不登校を改善するための実践

 まず始めに,不登校児童生徒の遅刻,欠席,早退の把握と家庭への連絡等の相互の連携を絶やさないことが大切です。カウンセリングを通して,本人や保護者をサポートし,信頼関係を作り,つながり感を保つことが求めらます。その上で,アサーショントレーニングを活用してみましょう。


1 アサーショントレーニングの活用                

  (1) アサーションとは何か

  アサーション(assertion)とは,「自分も相手も大切にしようという自己表現で,自分の意見,考え,気持ち,欲求などを正直に,率直にその場にふさわしい方法で述べることであり,また同時に,相手が同じように表現することを待つ態度を伴う」ものです。言い換えれば,相互の関係性を大切にした自他尊重のコミュニケーション,と言うことができます。これを教育的な観点から見れば,児童生徒が自分の意見や考えを,聴く人の立場になってわかりやすくはっきりと話し,伝えると同時に,話す人の立場になって,相手の話を最後まできちんと聴き理解しようとするように指導することです。

 「アサーションとは?」

  自分の気持ちも相手の気持ちも大切にするコミュニケーション方法のこと。
  自分の考えや意見・気持ちを,

   正直に, (相手と向き合う,心の内にため込まない)

   素直に, (自分の気持ちをありのままにして)

   適切な方法で, (自分も相手も大切にした方法,人権を侵さない方法)

   表現すること。自己表現の方法。


  (2) 3つの自己表現タイプ
  
   (ア) 攻撃的(aggressive)な自己表現

  攻撃的な自己表現とは,自分は大切にするが,相手を大切にしない自己表現のことで,過剰な自己表現とも言えます。自分の考えや意見,それに気持ちをはっきりと言い,自分の権利も主張します。しかし,相手の考えや意見,それに気持ちは無視したり,あるいは軽視したりするため,相手に押しつけた言い方となります。また,相手の気持ちや欲求を無視して自分勝手な行動をとったり,自分の欲求を巧妙に相手に押しつけたり,相手を操作して自分の思い通りに動かそうとします。自己肯定・他者否定の話し方と言えます。

    (イ) 非主張的(non-assertive)な自己表現

  非主張的な自己表現とは,相手を大切にするが,自分は大切にしない自己表現のことで,不十分な自己表現とも言えます。自分の気持ちを考え,信念を表現しなかったり,し損なったりするために,自分で自分を抑え込む結果になります。これには,曖昧に言ったり言い訳がましく言ったり,遠回しに言ったり,聞こえないように小さな声で言ったりすることも含まれます。相手を尊重しているようで,相手に素直でなく,自分に不誠実な行動であるともとらえられます。
 非主張的な表現は,相手に自分の考えや気持ちを伝えられなかったという不完全さや後味の悪さを体験し,イライラしたり落ち込んだり憂うつになったりします。自己否定・他者肯定の話し方と言えます。

    (ウ) アサーティブ(assertive)な自己表現

  アサーティブな自己表現とは,自分も相手も大切にした自己表現のことです。自分の考えや意見,それに気持ちや信念を率直にかつ正直に,その場にふさわしい方法で表現します。自己信頼や相互信頼の上に成り立つコミュニケーションでもあります。お互いの意見や気持ちの違いによる葛藤が起こることを予想し,葛藤が起きても,それを自分で受け入れ,処理しようとします。自己肯定・他者肯定の話し方と言えます。
 (3) やってみよう!アサーショントレーニング
   @子どもたちの実態に合わせてトレーニングするために準備シートを活用
   (アサーショントレーニング実施準備確認シート)
              子どもの実態
項目
学習の有無 繰り返し学習の有無 現状での改善点は 適切な教材は
@アサーションとは何か        
Aアサーティブな自己表現の仕方        
Bものの見方,考え方のアサーション        
*項目@〜Bの観点について,子どもが,今までにアサーショントレーニングの学習経験があるか,繰り返し学習しているかを判断し○か×をつける。また,現状での改善点や,教材として何が適切かも考え記入する。

   Aアサーショントレーニングでコミュニケーション能力を育てる授業実践
                                         *資料参照 ←ここをクリックする 


2 アサーティブな自己表現の幅について

(1)アサーティブな自己表現には幅があります。

(2)適した表現は一つではありません。

(3)自分と他者のアサーティブな自己表現の範囲には,ずれがあることを知っておきましょう。

(4)自分にできる範囲・場面からやってみると取り組みやすいです。

(5)自分で工夫して表現した後,相手の気持ちを聞いて,表現が適切だったか確かめることも大切です。


3 コミュニケーション能力の高まり,人間関係の心地よさ,
  不登校の改善へ

(1) ポイントは,モデリング・率先垂範をする。
 「教師が変われば,子どもが変わる」という言葉があるように,まずは教師が手本を示すことが必要です。メラビアンの法則で,人が表現したいことは,7%が「言葉の意味」で,38%が「話し方」で,55%が「態度」で伝わると言われているように,言葉と態度の両方が重要になります。
(2) アサーショントレーニングを繰り返し行う。
 アサーショントレーニングを繰り返し練習することで,コミュニケーションスキルは確実に身に付いていきます。アサーショントレーニングは,課題解決場面において,転ばぬ先の杖ともなりますし,転んだ後の起きあがり方の習得にもなりますし,転んだ後の怪我の痛みの緩和にもつながります。
(3) アサーショントレーニングは,子どもの心と教師の心とを大切にする気持ちを融合できる具体的な実践方法です。(図1) 
(4) 心地よい循環のための一方法。心を形に・・・・優しさが広がる波紋作りです。
 学級集団全員が,優しい言葉かけや態度に気をつけるようになり善循環が生まれます。素直な思いを伝え合える雰囲気ができあがり,自己肯定感の高まりにもつながります。そして,登校意欲が高まり,不登校の改善へ役立ちます。(図2)


(参考文献)
『生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策について』(文部科学省初等中等教育局児童生徒課 2005.3)
『生徒指導上の諸問題の現状について』(文部科学省初等中等教育局児童生徒課 2005.9〜12)
『突発性攻撃的行動及び衝動』を示す子どもの発達過程に関する研究ーキレる子どもの成育歴に関する研究(国立教育政策研究所生徒指導研究センター 2003.3)
『不登校への対応と学校の取組について』(国立教育政策研究所生徒指導研究センター2004.7)
『不登校とその親へのカウンセリング』(諸富祥彦 2004.5)
『相談活動に生かせる15の心理技法』(鈴木教夫 ほんの森出版 2004.7)

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