長崎県教育センターWeb情報 第213号 (平成18年8月10日)


図画工作科ワンポイント講座 4 


 今回は,立体表現の中から,材料を扱うだけでも触覚を刺激する効果がある「粘土による表現」を取り上げます。指導を行う際の基本的なことについてのワンポイント講座です。


1 粘土を表現材料として使うことのよさについて

(1)  やり直しが容易にできる。
(2)  同じ粘土でも,粘土に含まれる水分量でかたさが変わるので,様々な感触を感じたり,表現したりすることができる。


2 粘土の種類について

 可塑性(固体に,ある限界以上の力を加えると連続的に変形し,力を省いても変形したままで元に戻らない性質)をもち,造形表現に適したものを粘土と呼ぶ。土粘土・油粘土・紙粘土・樹脂粘土・おが屑粘土・小麦粉粘土などたくさんの種類がある。

土粘土 塑像の基本学習や石膏の型取り用として広く使用されている。含まれる水の量によってかたさが変わり,何回でも練り直して使用することができる。乾燥させればそのまま作品にできるものもある。
油粘土 放置してもかたまらないので管理がしやすいが,独特の臭いがあったり,べたついたりする。最近は臭いやべたつきが改善された製品もある。また,かたさや性質も様々あり,幅広い用途に使用されている。
紙粘土 パルプと石粉を主原料とする。きめの細かいものや非常に軽いものなど多くの種類がある。乾燥させればそのまま作品にできる。
樹脂粘土 樹脂を主成分とする。手触りがよく,乾燥後は丈夫なものや弾力のあるものなど様々なものがある。乾燥させればそのまま作品にできる。
おが屑粘土 おが屑が主成分で,ベタつかず,乾燥後は軽くて丈夫になる。乾燥させればそのまま作品にできる。
小麦粉粘土 小麦粉を主成分とする。きめが細かくのびがよいので精密な成形が可能である。乾燥させればそのまま作品にできる。


3 「立体に表す表現」の指導上の留意点

 小学校の「造形遊び」との違いを明確にする。「造形遊び」のように材料から発想し立体にしていく場合もあるが,「立体に表す」とは,思ったことや感じたことなどからスタートして立体に表すということである。


4 粘土による表現

(1) 使用する粘土
 土粘土の質感を大事にしたもの,口に入れても安全な材料でできたもの,軽いもの,粉末のもの,収縮が小さいもの,破損しにくいものなど様々な種類があり,色も様々である。ねらいや発達段階を考慮して,どの粘土を使用するか決める。授業で扱うことが多いのは,乾燥すれば耐久性があり,作品として残すことができる粘土であるが,このような粘土は一度かたくなったら再生することはできないので,管理に十分気を配るようにする。
(2) ヘラ
 手を使ってつくるのが基本であるが,細かな表現やヘラの効果をねらいたい時に使用する。
(3) 粘土板
 作品に直接触らないで移動させたり,机などとくっつくのを防いだりするために必ず使用する。ベニヤ板を代用してもよい。
(4) ビニール袋
 作品を覆うためと,残りの粘土を保管しておくもためにそれぞれ1枚(計2枚)。
(5) 回転器(高学年になれば是非使用したい。)
 立体はあらゆる方向から見ながらつくるので,回転器があれば便利である。
(6) タオル2枚
 1枚は水で濡らしてかたく絞り,これから使う粘土を包んでおく。もう1枚も水で濡らしてかたく絞り,制作途中の作品を包んでおく。
(7) 切り糸
 大量の粘土を小分けにするときなどに便利である。


5 塑像の授業に入る前に指導しておくこと

(1)  紙粘土や樹脂粘土,おがくず粘土,小麦粉粘土で作品をつくる時は,その前に土粘土で粘土遊びを1時間程させておくことが大事である。そうすることによって,粘土の性質や触感を体験させておくことができ,後の学習のねらいを達成させるために大きな意味をもつ。
(2)  粘土の中の空気を抜くために板にたたきつけることもあるが,粘土を机(粘土板)に何度もたたきつける児童が多いので,粘土遊びの時に注意し,こねるように指導する。
・たたきつけても粘土は柔らかくならない。
・粘土のかたさを均一にするためにしているのであれば,棒状に延ばして折りたたむ作業を繰り返せばよい。
・粘土を延ばしたいとか形を整えたいのであれば,ヘラなどを使って形を整えるとよい。
*粘土を丁寧に扱い,一つ一つの行為を大事にし,かたまりを感じながらつくる習慣を身に付けさせたい。


6 制作手順

 大きなものや動きのあるものをつくるときは,針金等を使い芯をつくりそれに粘土を付けていく。芯をつくるためには新たに制作上の知識が必要で,高度な技能を要する。したがって,小学校の段階では,粘土の可塑性を使っての表現に絞り,芯をつくらなければできない表現まで学習する必要はないと考える。
(1)  クロッキーノート(紙なら何でもよい。ファイルできるようにする)につくりたいものを描き,どう表現するか考えをはっきりさせる。
(2)  何をつくるかということによっても違うが,基本的には○○gの粘土を使うのであれば○○gすべてを使うことが大事である。よく表現できたときには,大きく感じるし,うまくいかなければ小さく感じる作品になってしまう。
(3)  「かたまり」であることを意識してつくるように指導する。
細かくちぎって付けないように指導する。(表現が小さくなる)
あらゆる方向からみてつくるように指導する。
細かいところを先につくると,やり直しをしたくなくなるので,細かいところをつくるのはできるだけ先にのばす。細かいところをつくろうとしなくても,「かたまり」や「面の流れ」を意識してつくっていくと,自然と細かいところの形はできてくる。
新たに付けようとする粘土よりも,作品の方がかたい方がつくりやすい。付ける粘土がかたくなったら少しの量をとり,水で湿らせてちょうどよいかたさになるようにこねるとよい。
(4)  大まかな形ができたら,細部をつくる。
 つい作品の上に利き手でない方の手を載せて,押さえつけながらつくってしまう。これではせっかくの形が甘くなってしまうばかりか,作品が自然と押しつぶされて,生き生きとしなくなってくる。
(5)  形をよく理解してつくる。
 その通りつくる(髪の毛一本一本をつくるなど)わけではない。どうつくればそう見えるかということを考えてつくる。
(6)  乾燥させる。
(7)  着彩をする。(主に加工粘土の白を使った場合)
 色をつけるときは絵の具やポスターカラーでつける。その後ニスを塗って表面を保護する。アクリル絵の具でつける場合は,ニスを塗る必要はない。また,あらかじめ粘土に絵の具などを練り込んで着色する方法もある。


7 作品の保管の仕方(数時間かける題材の場合)

(1)  タオルをかたく絞って作品を覆う。作品とタオルの間には空気が入らないようにする。かたく絞っておかないと作品が柔らかくべたべたになってしまい,つくりにくい。
(2)  さらにビニール等で覆う。空気が入らないように口をしっかり結ぶ。
(3)  作品棚に余裕があるときは,置く場所を決めておく。作品棚がない場合は,紙に学年・組・氏名を書かせて作品の下に敷いておく。


8 土粘土をつかいましょう

 紙粘土や樹脂粘土による作品づくりばかりでなく,作品として残さなくてもよい学習(触感を味わわせることをねらった学習)や,粘土の性質を知る学習を年に1度くらいはさせたい。これは絵画でいうデッサンに相当する経験である。
(1) 土粘土について
 可塑性があり造形表現が容易であるため,主に原型として使う。しかし,耐久性はないので,他の素材(石膏など)に置き換える必要がある。一次的な素材である。紙粘土や樹脂粘土,油粘土のような臭いがない。
 木節(きぶし)粘土だけだと扱いにくいので,普通は木節粘土と蛙目(がえろめ)粘土を6:4か7:3の割合でまぜて使う。
*木節粘土  (堆積粘土。主成分は花崗岩が風化してカオリナイトが沈積していったもの。不純物や有機物を多く含み粒子が細かい。産出地や色によって,黒木節,白木節,青木節,赤木節がある。)
*蛙目粘土  (堆積粘土。主成分はカオリナイトと石英。粒子が粗い。)
半永久的に使用することができる。
(2)  土粘土づくり
 市販のものを買わなくても,学校の近くに粘着力のある土があれば,粘土として活用できる。採取するときは土地の所有者の承諾を得ること。以下に水簸(すいひ)という粘土の精製法を紹介する。
@  バケツなどの容器に採ってきた土と多めの水を入れてかき回す。ゴミなどが浮かび上がるので取り除く。
A  数日間放置すると,水と土が分離するので上澄みを捨てる。
B  残った土の上の層から別の容器に移し,底にたまった砂は捨てる。
C  再度水を加えてかき混ぜ,数日放置する。
D  上澄みと底にたまった砂を捨て,残った土を粘土として使う。
E  この状態ではどろどろで,粘土としては使えないので,ちょうどよいかたさにして使用する。
(3) 管理
 通常は粘土槽の中に入れて,いつでも使えるかたさに管理しておくが,ポリバケツでも代用できる。水を掛け,濡れた布で覆ってビニールで蓋をし,週に1度くらいかたさをチェックするようにする。これだけでいつでも使える状態を保てるが,長期間ほったらかしにしておくと,厳重に蓋をしていても粘土は乾燥しかたくなってしまう。その時は,粘土を完全に乾燥させ金槌で細かく砕いてバケツに入れ,粘土が隠れるくらいに水を入れる。2〜3日で柔らかくなるがこの時点ではどろどろの状態なので,取り出して乾燥させる。こねたり乾燥させたりしながら,ちょうどよいかたさになるまで作業を続ける。この作業は数日かかる。


 人間には視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚という五感があり,これらを使って表現したり感じたりすることは年齢が若い時ほど必要で,後の成長に大きな影響を与えるといわれています。したがって,特に小学生のときに五感を使う体験をできるだけ多くさせたいものです。
 図画工作科や美術科で「表現する」というと,「絵に表す」ことを思い浮かべる人が多いと思います。もちろん絵は色などを使って,主に「視覚」を使い表現したり感じたりする大事な表現です。しかし,他にももう一つの大事な感覚である「触覚」を使う立体があります。厳密に言えば,立体は触るだけでなく見ることによっても感じることができます。表現することは,いろいろな感覚が相互に関わり合って成り立つものであることはいうまでもありません。図画工作科や美術科で鍛える感覚を,視覚だけに偏らないようにしなければなりません。五感を使う(刺激する)題材を多く取り上げてほしいと思います。


 図画工作科で付けるべき力の指導には,指導する側もある程度の技能を身に付けておく必要があります。県教育センターでは,少しでも先生方のお力になれるようにと「表現技法の基礎・基本」という講座を開設していますが,講座以外でもお気軽にご相談ください。

教育経営課 義務教育班    担当:塩田
TEL0957-53-1132  FAX 0957-54-0578



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