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教育相談課 相談班
ソリューション・フォーカスト・アプローチ(解決志向アプローチ)
−多忙な中での子どもたちへの援助の試み−
「子どもの様子が気になるが、どのように対応したらよいだろうか」「自信を失いかけている子どもを援助したいが、何かいい方法はないだろうか」このような声をよく耳にします。
教師はふだんの多忙な生活の中で、子どもたちの援助には、周到な準備と慎重な判断、そして専門的な知識が必要だと考えたり、時間のなさを嘆いたりすることもありがちです。
このような事情を踏まえて考案されたのが、できるだけ短期に子どもたちの自立を促そうとする心理療法のブリーフ・セラピー(短期療法)です。
その中でも、子どもたちの持っているリソース(資質や資源)に注目したカウンセリングの方法として「ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA・解決志向アプローチ)」が有効だとされています。
この方法は、子どもたち自身が自分のよさに気づき、自分で問題を解決していくことを目指したものであり、教師はその援助を行うという視点から成り立っています。
1 SFAの基本的な考え 
2 リソース(解決のための手がかり)とは?
子どもたちの、心の力となる源のことをリソースと呼んでいます。
ソリューション・フォーカスト・アプローチでは、「問題解消」や「原因分析」よりも、「解決構築」を目標の中心に据えて、「解決のための手がかり探し」を行います。この「解決のための手がかり」には、子どもたち自身が見失っている、自分自身の「強い所や良い所」が潜んでいるのですが、これを教師の関わりによって発見し確認することが、援助のための大きな力となります。
3 ソリューション・フォーカスト・アプローチの基本的な法則 
「解決のための手がかり」が確認されたら、その後以下のような考え方で子どもたちに接していきます。
@ うまくいっていることは、直そうとしない。
A 一度うまくいったことは、繰り返してみる。
B うまくいかない場合は、違ったことをしてみる。
このような考え方は、「悩みの相談」に関わらず、学校内での子どもたちへの様々なアドバイスにも応用できるのではないかと考えます。
4 ソリューション・フォーカスト・アプローチの質問技法 
ソリューション・フォーカスト・アプローチの最大の特徴は、様々な質問を用いることにあります。 以下に代表的な質問法を紹介します。特にこれらの質問は、「問題が起こらない時」「いつもよりも状態がよい時」「うまくいった時」「これから起きてほしい望ましい状態」などの、「成功体験」や「例外」を探すことを主眼に置いています。
@ 過去の成功(例外)を探る質問 現在うまくいっていないことでも、以前はうまくやれていたことはないか。
どんな時にうまくいっていたんだろう。
A 現在の成功(例外)を探る質問 現在うまくいっていない中でも、時には(少しは)うまくやれることもあるのではないか。
どんな時にうまくいっているのだろう。
B 将来の成功(解決後のイメージ)を探る質問(ミラクル・クエスチョン) 現在うまくいっていなくても、将来うまくやれるようになるのではないか。
何がどうなればうまくいくのだろう。
C 状態を数字で表す質問(スケーリング・クエスチョン) 最悪の状態を1点とし、望ましい状態を10点として、現在の状態は何点だろうか。
もっと点数をあげるためには、どうしたらいいのだろう。
現在の苦しい状態の中でも・・・点なのはどうしてだろう。
| 子どもたちの言葉の中に、解決の手がかりが… |
5 ソリューション・フォーカスト・アプローチの例
〈@ 不登校傾向が見られる子どもの例〉
主訴:最近、登校しぶりを見せている。理由を尋ねても何も答えない。
教師 : 最近、学校へ行きたくない日があるんだって? 子 : はい。 教師 : 一週間のうち、何日ぐらいそんな気持ちになるのかな? 子 : 2〜3日です。 教師 : じゃあ、行けそうな日もあるんだね? 子 : はい。 教師 : それじゃあ、行けそうな日と行きたくない日は、何がどう違うんだろうか。 子 : そういえば、朝早く目が覚めた時は気分がいいです。 教師 : じゃあ、明日から早起きを心がけてみようか。
〈A 宿題をしてこなくなった子どもの例〉
主訴:学習に対する意欲が低下している。原因は家族間の不和。
教師 : 勉強に身が入らなくなっているようですね。 子 : はい。特に家で宿題ができないんです。 教師 : 何か家庭で勉強できないわけでもあるのかな? 子 : 家族が落ち着かず、いつもうるさいんです。 教師 : いつもうるさいんですね。 子 : はい。いつもです。 教師 : 朝から晩まで? 子 : そんなわけではないんですが…。 教師 : 少しは落ち着く時もあるのかな? 子 : はい。家族がみんな寝静まっている時は静かです。 教師 : 他には? 子 : テレビのドラマがある時、毎週月曜日の夜9時には… 教師 : うんうん。そうやって家の中が静かになる時をあげていってみようよ。
その中で、あなたが勉強できる時が見つかるかもしれないね。
〈B 仲間に入っていけない子どもの例〉
主訴:友人に対して不信感を持ち始めている。原因は部活動内でのできごと。
教師 : お友達とうまくやっていけないんだってね。 子 : はい。なかなか仲間に入っていけなくて。 教師 : それはいつ、どんな時? 子 : 部活動の時です。 教師 : 調子のいいときの気分を10点として、調子の悪い時の気分を1点とするなら、部活動の時の気分は何点ぐらいかな。 子 : 2点か3点ぐらいだと思います。 教師 : けっこうつらい中で、2〜3点ぐらいはあるんだね。よくがんばっていますね。
もしこれを4点か5点にするとすれば、今と何が変わればいいんだろう。子 : できたら、仲間から先に部室に行く時に声をかけてもらったらいいんだけど。 教師 : そう。仲間から先に声をかけてもらえばいいんだね。じゃあ、部活動の顧問の先生にお願いしてみようか。
6 最後に
ソリューション・フォーカスト・アプローチという相談技法は、あえて問題分析を必要としないので、カウンセリングの専門家ではない先生方でも活用しやすい技法です。
特に、例にあげているように、様々な不適応傾向の初期の段階における働きかけとしては、効果の期待できるものであるといえます。
また、この技法は、日常の観察の中での子どもたちの小さな変化に対して即時に対応できる、まさに先生方向けの技法でもあります。
夏休み中にもさらには夏休み明けにでも、小さな試みから始められてはいかがでしょうか。
※なお、この技法についてはWeb情報 第140号でも紹介しております。

参考: 2004年 シリーズ学校で使えるカウンセリング『教師が使えるカウンセリング』諸富祥彦編集代表 ぎょうせい
2004年 『臨床心理学からみた生徒指導・教育相談』川島一夫・勝倉孝治編著 ブレーン出版