長崎県教育センター Web情報 第198号 (平成18年3月10日)

障害のある子どもの教育相談について


 特別支援教育を進めるにあたり,小・中学校や盲・ろう・養護学校における教育相談がますます求められてきています。保護者の悩みや不安をどう支援すればいいのか,担当者として知っておかなければならないことはたくさんあります。
 保護者は,子どもの行動について,「しつけ方が悪かった」「家庭環境のせいだ」と言われ悩んでいることがあります。子どもの行動が周りに迷惑をかけていると自分を責め,引け目,不安,怒り,あせり,あきらめを感じていることもあります。こうした保護者の気持ちに寄り添うことから始めることが大事です。子どもの気になる点や問題となる行動ばかりを話すのではなく,子どもの成長している点や頑張っている点などのよいところから話していくようにします。保護者の話を共感的に聞くことに努めながら,信頼関係を作り,保護者が話しやすい環境を作ることが大切です。

 教育相談する上での基本的態度は,カウンセリングマインドと呼ばれる以下の態度です。
傾聴 相手の語るところを「じっくりと聴く」態度
共感 相手が感じているように「共に感じる」態度
受容 相手のこれまでのがんばりを「肯定的に認める」態度   

 この3つの態度を受けて,相談者は自分自身が「認められた」という感覚を持ち,自分自身を受容する(自分の弱さや不安だけでなく今までの努力の成果を認めることで,自己解決能力の発揮につなげる)ことができ,目標に向かって進むことができます。


 話す時のことばには,十分な配慮が必要です。これまでの努力や子育てを決して批判しないこと,こちらの価値観や人生観を押しつけないことはもちろん,保護者が感じたことを確認し,ことばを選んで相談にあたることが大切です。
悪い例 良い例
「お母さんが,そんなふうだから○○さんも…」 
「育て方のせいでは…」
「そんなことやっても,○○さんには無駄では…」
「愛情不足なのでは…」
「○○さんのために,今まで〜をしてきたのですね。」
「お母さんのこれまでの頑張りがあるから,今の○○さんの〜(いいところ)があるのではないでしょうか。」
「親なんだから〜するのは当然です。」
「普通〜なんだから,〜させるべきです。」
「障害のある子どもは〜ものです。」
「お母さんは,〜が大事だと感じて〜してきたんですね。」
「これからの○○さんのために,〜させたいのですね。」
「△△(子どもの気になる行動や障害の告知など) の時,お母さんは,Aだと思いましたか?Bだと思いましたか?」
「〜と感じたんじゃないですか?」
「△△の時,お母さんはどう感じて(思い)ましたか?」
「□□さんにそう言われて,どう感じ(思われ)ましたか?」
「専門機関に相談したらどうですか?」 「○○さんの指導のために,担任がアドバイスをもらいたいので一緒に同席してもらえませんか?」
「〜ができないので,家でさせてください。」
「〜して困ります。」
「今,学校で○○を頑張っています。ご協力をお願いします。」
「〜したのは,こんな気持ちだったのですね。」

 相談の申し込みに至る経緯は様々です。誰にも相談することができず,不安な気持ちで申し込む保護者もいれば,他の人から紹介されて申し込む保護者もいます。相談を受けることに抵抗を感じている場合もあるでしょう。申し込みを受けるときには,申込者の話し方や語気などに込められた部分にも気を配り,心情に配慮することが必要です。
申し込みを受ける際の聞き取り情報
主訴
  • 本人や保護者が相談したいと思っている事柄
  • 困っているのは誰なのか    
基本情報
  • 子どもの名前
  • 性別
  • 学校名・学年
  • 保護者の名前
  • 申込者
連絡方法
  • 連絡する上で都合の悪い曜日や時間帯
  • 特別な配慮の有無
その後の面接での聞き取り情報
現在の様子
  • 基本的生活習慣
  • 家族との関わり
  • 園や学校での様子
  • 学校の情報
  • 学校への連絡
生育歴
  • 妊娠中の様子
  • 在胎週・出生体重・身長など
  • 周産時の母子の様子
  • 首のすわり・這い始め・ひとり立ち・ひとり歩き
  • ミルクの飲み具合
言葉の発達
  • 話し始めの年齢と言葉
  • 言葉の理解
療育歴
  • 障害に気付いたときのこと
  • 親子教室・療育機関・相談機関
  • 療育手帳等の有無
医療歴
  • 診断
  • かかりつけの医療機関
  • 投薬の種類
  • 医療的な経過


 初回面接では,相談者が安心して自由に話のできる環境を整えておくことが大切です。
初回面接の目標 具体的な話し方の例
@信頼関係の確立  担当者が介入する場合は,「Yes or No?」「A or B?」の選択形式は使用せず,自由に話せるようにします。
○「その時,お母さんはどのように思っていたのですか?」
○そのことについて,もう少しお話ししてくださいませんか?」       など
A問題の明確化 ○「ここの教育相談は,どうやってお知りになったのですか?」
○「教育相談に対してどのようなイメージをもっておられますか?」
○「今までどのような相談を受けてこられましたか?」           など
B相談目標の共有 ○「ここで相談することに対して,どのような期待がありますか?」
○「一緒に○○していきたいと思うのですが,どう思われますか?」   など
C今後の相談についての確認  初回相談の終了時までに,アセスメントが確実なものとなることは難しいかもしれませんが,おおまかな今後の支援について,
○次回の相談をいつするか?
○どの程度の頻度で継続していくか?
○担当者が誰になるか?
○支援のポイントはどこか?              などの見通しを伝えます。


そのほか気をつけておくべきこと

 面接中に相談者が沈黙してしまうと,担当者が沈黙に耐えられず,話し出してしまいがちですが,沈黙は相談者が自分自身の心と対話しているときですから,邪魔をしないようにします。

 担当者が面接の途中で席を立つことは控えます。不信や不安をかき立てることにもなるので,面接の日程変更が生じる恐れのない時間設定をします。
 標準的な面接時間の設定としては,初回面接1時間30分程度/継続面接1回50分程度が目安となります。
 面接中に,人の出入りがなく,ほかの人に話を聞かれることのない部屋を確保する必要があります。どうしても無理な場合は,ついたてやブラインドを用意するなどの工夫が必要です。
 リラックスして話のできる90°法(机を挟んで向かい合うのではなく,机の角をはさみ,相談者の横から話しかけるような座席)などの面接技法を取り入れるなど,座席の座り方に気をつけます。

<参考文献>
                      独立行政法人 国立特殊教育総合研究所 

お知らせ
 教育センターホームページに,教育相談に関するガイドブックとして,「気になる子どもを支援する先生方のために〜教育相談Q&A〜」を平成18年5月中旬ごろ掲載する予定です。

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