長崎県教育センターWeb情報 第179号 (平成17年10月21日)

ITを活用した教育効果の向上について

教育情報課長 吉田親義


 平成17年3月,国立教育政策研究所において教育研究情報センター長の清水康敬先生(現:メディア教育開発センター理事長)から,英国での調査報告の資料をいただいたので紹介します。ところで,国立教育政策研究所情報センターでは現在,我が国における教育情報提供の中核的Webサイト,「教育情報ナショナルセンター」(NICER)の機能整備を行っているところです。 以下資料からの抜粋です。

 


 
ICTの活用と学力向上について(英国の調査結果から)
 コンピュータ等のITの活用によって,子どもたちの学習意欲が高まり,学力が向上すれば,教育のIT化の意義は大きい。英国ではITC(Information and Communication Technology,英国ではICTと言っている。)活用による学力の向上について調査結果を報告している。                
(1)教員のICT活用による学力の向上
 英国では全国学力テストを実施し,その結果を公表している。たとえば,キーステージ2(日本の小学校高学年に相当)の児 童は「レベル4」以上を達成することが目標で,このレベルを越えた児童の割合が,各校毎に公表される。         
 そこで,ICTを指導によく活用している学校と,活用していない学校の児童の成績を比較した結果,英語(日本の国語)と数学では25ポイント,理科では22ポイントという大きな差が現れている。このことは,小学校の教科指導において教員がICTを活用することによって,児童の成績が高くなることを示している。


指導にICT活用と生徒の成績(KS2) 英国

 

Primary SchooIs-ICT and Standard.Jan.2002


 次に,教員のICTに関する知識が生徒にどのような影響を与えるかを調査した結果,生徒の興味,努力,行動の評価点が,指導する教員のICT知識が豊富な学校ほど高い。ICTに関する教員の知識が豊富であることが,児童生徒の学力が向上することを意味している。単に科目の成績が高まるということではなく,子どもの興味や努力,行動に関しても,教員のICT活用の効果が示されたことは,大きな意味をもっている。

 

(2)生徒のICT活用による学力の向上
 児童生徒がコンピュータ等を活用して教科内容を学習したり,課題解決したりすることは効果があると多くの人が主張している。これに関しては,キーステージ2(小学校高学年)の児童の成績を評価した結果,英語(日本の国語),数学,理科すべての教科で児童のICTの活用が多い学校程,児童の成績が高い。また,ICTを活用した学習機会が多くなるほど,児童の態度や行動がよくなっている。 
 次に,中学校段階になると,生徒のICTに対する態度やスキルがさらに重要になる。キーステージ3(日本の中学生)のテストの結果から見ると,ICTに対して生徒がポジティブな態度を持つ学校と,そうでない学校では,成績に差が現れている。数学で14ポイント差(80%と66%),理科で17ポイント差(76%と59%),英語で14ポイント差(81%と67%)の差である。このことは,生徒のICTスキルの程度が各教科の成績に大きく関係することを意味している。


生徒のICT活用と成績(KS3)

 

The Secondary SchooI of the Future,Feb.2001


 さらに英国では,児童生徒がどのようなICT活用をした場合に学力が向上するかについて,追跡調査が行なわれている。対象となっている学校は,小学校が30校,中等教育校が25校,特殊教育校が5校である。まず,合計2,179名の児童生徒に対して各教科の試験を行い,それから2年後に再び試験を行なっている。この二年間にICTをよく活用した児童生徒とそうでなかった生徒を二群に分けて比較した結果が公表されている。それによると,小学校高学年では,英語で3.6点,算数で1.2点ICTを活用した児童のほうが偏差値が高い。また,日本の中学校段階において,ICTを活用した生徒の偏差値は,理科で2.6点,数学において1.0高い。また,日本の高校段階においては,外国語の偏差値で4.5点,理科で3.3点,技術設計で2.3点,地理で1.9点高い。したがって,ICTをよく活用した児童生徒ほど,科目の試験成績が高くなることを示している。
 尚,下の表で示す値は英国における結果を著者(清水康敬)が偏差値に変換して,2年後の変化を求めた値である。


児童生徒のICT活用   英国

2年後の偏差値
2179名の生徒を対象)

・小学校   30校
   高学年 英   語:3.6点   算数:1.2点
・中等教育校 25校
   中学  理   科:2.6点   数学:1.0点
   高校  外 国 語:4.5点    理科:3.3点
        技術設計:2.3点   地理:1.9点

・特殊教育校  5校

 

(3)校長の指導力による学力の向上
 学校経営の点からすると,学校長のマネージメント能力によって,その学校の児童生徒の学力に影響されることはあり得る。この点について,英国での調査結果によると,よい校長(Good Headmaster)の学校の児童のほうが,その他(Others)の学校より成績が高い。ここで興味深いのは,学校のICTの整備状況が貧弱であったり,不満足の学校では,校長の能力の違いによる差がはとんどないが,ICT整備状況が満足である場合には,校長のマネージメント能力が児童の成績に大きな差になって現われていることである。これは,学校のICT環境が整備されていれば,校長のマネージメント能力が高いほど児童の試験成績が高いことを意味している。
 しかし,たとえ校長のマネージメント能力が高くても,ICT環境が不満足であれば,成績は上がらない。インフラ整備が先決であることを示している。

 

 指導にICT活用と生徒の成績(KS2) 英国

Primary SchooIs-ICT and Standard,Jan.2002

 

 

 以上,ITを使った授業は,子どもの学力向上に効果があることが述べられています。このことからも,教育の情報化は推進されるべきものであると考えます。そのためには,教員のIT活用の研修は欠かせないもとなってきます。
 教育情報課では,来年度のパソコン講座において,「授業でのIT活用」を教科の指導主事と連携するなどして,さらに充実していくよう計画しています。多くの先生方の受講をお待ちしています。


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