教育センターWeb情報 第48号 (平成15年3月7日)

アスペルガー症候群?

 教育センターが行っている教育相談で,LD(学習障害)及びその周辺の子どもたちの相談が増えています。通常の学級に通っていて,「特別な教育的支援」を必要とする子どもたちの相談です。学習面や集団生活などについて,教師からも保護者からも相談があります。今回はこのような「特別な教育的支援」を必要とする子どもたちの中でも,集団適応についての相談が多いアスペルガー症候群の子どもたちについて取り上げました。
 アスペルガー症候群の子どもたちは,その障害の特性により,社会への適応や友達との折り合いがうまくいかず,いじめの対象になりやすいため,本人も保護者もつらい思いをしていることが多いようです。
 適切な指導を行うためには,教師がこの障害の特性をよく理解し,一人一人の実態にあった具体的な取り組みをする必要があります。
 
1 アスペルガー症候群とは?
アスペルガー症候群とは,自閉症の一つのタイプで,LD(学習障害)や知的障害と同じ発達障害というグループに属しています。最初に症例を報告したハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医の名前にちなんでつけられました。アスペルガー症候群は,自閉症と同じように@社会性,Aコミュニケーション,B想像力と創造性およびそれに基づく行動,の3分野に障害があり,言葉の発達の遅れが少ないというところが自閉症と違うところです。知的に遅れのある人はほとんどいません。
診断は医師が行いますが,短時間での診察では障害の特性が明らかに現れないことから診断が見逃されることがあります。先にあげた自閉症の3症状が現われるのが3歳過ぎてからということが多く,症状が目立たないために検診などでも見逃されがちです。また,3歳児では自閉症と診断されていても,6歳児では言葉が発達してアスペルガー症候群と診断されるようなこともあります。
原因は親の育て方や愛情不足などではなく,出産時や出生後などごく早期に脳の一部に障害が生じたのだろうと考えられています。
初めはまれな障害とみられていましたが,最近の研究では,200〜300人に1人の割合でいるらしいということがわかってきています。
 
2 アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群の行動の裏には,次のような特徴があることを知っておくことが重要です。
これらの特徴が理解されないと,子どもたちの間でいじめの対象になることもあります。
 
(1) 他の人との社会的関係を持ちにくい
人の気持ちを推察することや,他者の立場に立って考えることが苦手です。
   ●素直で悪気はないけれど,相手の傷つくことを言ってしまいます。
   ●暗黙のルールがわかりません。
   同年齢の子どもと波長があいません。
 
(2) コミュニケーションをとりにくい 
言葉は話せるのですが,相手との会話のキャッチボールを楽しむことが苦手です。
回りくどく,細かいところにこだわります。
一方的でわかりにくく,話が飛びやすいです。  
口ごもる,小さな声で独り言を言うなど内容より音声に関心があり,独特な話し方をする人もいます。
テレビや辞典で覚えた言葉を場面に関係なく使うなど,使い分けが苦手です。
言葉は豊富でも感情や情緒を表す会話が苦手です。
言葉の裏の意味や曖昧な表現を理解することが苦手です。
 
(3) 想像力と創造性の問題
興味の範囲が限られています。想像力と創造性の問題は,遊びや行動面で柔軟性のなさやこだわりなどとつながっています。
ごっこ遊びは得意ではありませんが,ものまね遊びは得意です。
いろいろな物を集めたがります。
機械的な記憶が得意です。
行動パターンが決まっていて,変更を嫌がります。
 
(4) その他
視覚,聴覚,嗅覚,味覚,皮膚感覚の感覚分野に過敏または鈍感さがみられます。
常同運動,動作のぎこちなさ,手先の不器用さなどがみられます。
字を書くのが苦手であったり,独特の計算の仕方をしたりします。
 
 
 
 
 
 
 
 
3 子どもへの対応の方法
 (1) 信頼できる関係作りから
自分の苦手なことを理解してもらえるんだという安心感をもたせましょう。それは課題に取り組む意欲を高め,自己肯定感に結び付き,他者を受け入れるきっかけとなります。
 
 (2) 安全で穏やかな環境づくり
刺激の少ない静かな環境の方が本来の能力を発揮できます。叱るときも穏やかに冷静に話をする姿勢をもちましょう。大人が感情的になると「怒られた」という気持ちのみが残ってしまいます。
 
 (3) ルールや指示は明確に
ルールはできるだけ明確で,実行可能なものにしましょう。
 
 (4) 予定は明確に
 変更がある場合は前もって予告しましょう。終わりがいつか,終わったあとのことなども予告します。文字や絵で予告すると効果的です。
 
 (5) 集団行動をするときは個別の声かけを
    そばに近づいて小声で指示し,プライドを傷つけないようにすることも大切です。
 
 (6) ゆったりと待ちましょう
 子どもの行動が変化するには,長い時間が必要です。困った行動は少しずつ改善していくようにしましょう。
 
 以上いくつか対応の方法をあげましたが,
 決まった対応の方法はありません。その都度,基本的な考え方を検討・確認しながら,
一人一人の子どもの実態に合わせて対応を考えていく必要があります。
 また,担任一人で悩まずに学校全体で支援体制を作ることも必要です。
 子どもたちのことを理解する上で大切なことは,彼らは悪気があって気になる言葉を言ったり,行動をしているわけではないということです。彼らは基本的には素直でまじめすぎる性格なのです。
 
 
   (教育相談課特別支援教育班)
           0957−52−9241
 
<参考文献>
・「アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポート」 杉山登志郎  学習研究社
・「アスペルガー症候群を知ってますか?」   社団法人 日本自閉症協会東京都支部

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